細い金属パイプが縦横につながりながら室内の空間をのびていた。ある部分は壁や床や天井の配管と連結しているようにも見えて、またいくつかの先端には、針金のハンガーや旧いクリーナー、カバーなどが接続して、壁に取り付けられた窓格子や床の破片などとともに構成的に作られた空間に日常や記憶への手がかりを添えていた。初めて見た利部志穂(かがぶ・しほ)の個展は、鮮明なその才能のスパークを伝えた。
半年後、区画整理で取り壊される彼女の実家のビルの解体過程に介入する試みに立ち会った。防塵マスクとヘルメット、作業着姿の作家は、たちまち瓦礫と化した物質と記憶を再生するように、早い夕日も忘れて一心不乱に建材のかけらをブリコラージュしていた。オシリス神話、構造人類学、建築、ポスト・ミニマル、マッタ=クラーク・・・わたしのシナプスにたくさんの信号の火が点滅していた。  
                       
鷹見明彦(美術評論家)

2007年11月28日水曜日

11月25日展示風景











































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